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「エドワードおじいちゃんは、本当におじいちゃんなの?」
「…なんで、そんなことを?」
自分の膝の上で、ごろんと寝転がって見上げるひ孫に優しく問えば、少年はかわいく首をかしげた。
「だって学校のみんなが、こんなのおじいちゃんじゃない、お兄ちゃんじゃないかっていうんだもん!」
「写真を見せたのか?」
「この前家族で一緒にご飯食べに行ったときに写真取ったの忘れた?」
紅葉みたいな両手をえい、とエドワードの両手に載せて、にぎにぎしながら子供は笑う。
そんな無邪気でなんの心配もなさそうな顔、昔の俺達にそっくりだな、とエドワードはつられて微笑んだ。
「お父さんもお母さんも、…じいちゃんは変わってるからしかいわないし」
「ははは」
20年ほど前に「血の色緑じゃないですよね、おじいちゃん」と言われたことを思い出して、エドワードは笑った。
息子と娘は「お父さんはそういうもん」という何故か意味不明な理解をしていて何も言わないが、流石に孫まで来るとそうもいかないらしい。
「おじーちゃんも、わかんないな。25くらいまでは、普通に年を取っていたと思うんだけどね」
ぶらんぶらんと握手をしながら、天井を見上げる。
さらりと頬を通る髪の毛は、白くもならず、未だに太陽のような黄金を保っていて。てっきり皺になると思った腕も顔も全く年を取らなくなった。
「ある日、夢を見たんだよ。古い知り合いの夢で。死ぬまで会えないと思っていたのに、夢に出てきた」
幸せな夢過ぎて、何十年経っても忘れられない。未だに思い出すと、胸が温かく、そして苦しく泣く。
そんな残酷な夢。
(終わり)
