日焼け(事後)
さきほどから、ベッドの上に一つの小さな毛布の小山。
「…鋼の」
「……」
もぞもぞと動いたちいさい毛布の固まりが、なぜかその言葉に反応して壁に寄る。
頭からすっぽり毛布を被って、ロイの大好きな金糸一本見せてくれない子供は、さきほどからすっかり蓑虫みたいにベッドの上で丸まっている。
「…毛布が背中に当たって痛いだろう」
「……」
返事無し。
流石に少し困って、ベッドに腰掛けたら、見えないはずなのに彼は又ロイから逃げようとした。
小さな蓑虫が移動する。
…ええと。
正直ここまで拗ねるとは思ってなかった。
「いい加減、顔を見せて欲しいんだが」
「…やだ」
やっとか細い声だけ返ってきた。
ゆっくり手を伸ばすと、毛布小山がすすす、と違う場所に逃げる。
「………」
上からのしかかってやろうかと思ったが、そうすると背中が痛くて悲鳴を上げるんだろうなあと思ってさすがにやめた。
「出てこないと軟膏が塗れないぞ」
さっき無茶をしたから、もう一度塗ろうと言ったのに、どうやらぷるぷる毛布の中で首を振って抵抗しているらしい。
「鋼の、気持ちはわかるが」
「わかるかよ!」
悲鳴みたいな声が響いてきた。
「あ、あんたにわかるわけねえじゃん。あんな、あんな…」
思い出したのか、そのままベッドに蹲ってしまった子供はどうやら泣きそうに震えている。
「…っ…恥ずかし…あんな……」
どうも、自分で欲しがって腰を振ったことがとんでもなく羞恥だったらしい。させたのは私だが。
ベッドの上に登ると、震える毛布を抱きしめるようにする。
「…っ!」
痛みがあるのか、みじろいだその毛布をゆっくり剥がせば、猫みたいに丸くなった子供が、涙目で震えていた。
「鋼の」
「………」
怒っているのかと思った瞳はゆらゆらと揺らいでいて。
涙をたたえた金色の瞳はそれでもロイを映し出している。。
火照った頬がまるで未だに情事の最中のようで、そんな恥じらう素振りに陶酔する。
――――――――――又、不埒な気分になってきた。
「…いたい」
小さく言われて、背中の部分に手を当てていることに気がついた。
「そんなに恥ずかしがらなくても」
「誰のっ…!」
せいだと。
又思い出したのか、言葉にならず、ぎゅう、と指が毛布に絡んで、羞恥を耐えていた。
睫毛に溜まった水滴を唇で吸い取る。震えるそれが自分のものだと思うとたまらなくなる。
「……欲しがる君はとてもかわいくて」
「――――――――――っ!」
「一晩中でも抱いていたかった位なのに」
「あ…ぅ、あ」
あまりの恥ずかしさに、上気した頬。
腕を手にとって、抱え起こすと、そのまま胸に抱き込んだ。
背中に触れないので、髪を撫でる。
「………」
抵抗するかと思ったのに、子供はされるがままだった。
野暮な毛布がベッドに転がっていて、やっと蛹は蝶になれたらしい。
何も言わずに、その髪をひたすら撫で、優しく愛撫するようにすると、おずおずと子供の腕が背中に回った。
しばらく、そのまま。
彼の身体は抱きしめているだけで温かくて心地よかったし、何かを言うのも無粋な気がした。
こんなことで、愛情を。時々確認してしまう自分が少し虚しくなるけど。
でも抱きついてきている腕の温もりが嬉しくて、首筋にキスを落とせば諦めたような溜息の後、
しばらくしてかわいい寝息が小さな蝶から聞こえてきた。
(終わり)
