2(連載中)
(眠ってしまった)
初めての経験だ。
胸に頭を預けて、塑像みたいに整った容姿の子供が、規則正しい寝息をたてている。
「大将?」
呼んでも返事はない。
両手にしっかり抱き込んでしまった状態で、どうにもこうにも途方に暮れる。
いや、眠ってるこどもはとてもかわいい。
そんなに重くないし、これだけ安心してくれると、心がほんわりとする。
閉じられた睫毛は思ったより長いし、整った鼻筋は将来どれだけ美人になるのだろうかと思う。
隣で見ているだけで、充分ですと思えるほどに完成された寝顔は写真があるなら取りたいくらいで。
そんな神様の最高傑作みたいな少年をだね。
(起こして仕事に行けってえのかよ…!)
ちらりと時計を見れば、休憩が終わるまで後三分しかない。
エドワードに視線を戻せば、完璧に閉じられた瞳と、頬に落ちる髪の毛がそれこそ綺麗すぎて思わず息を呑んだ。
そんな、趣味はないし、単にかわいいかわいいとしか思えないけど。
(これを起こすのか?)
多分むにゃむにゃと言いながら目を覚まして、「あー、ごめん少尉、仕事行って」と欠伸をしながら言われるんだろう。起こしたくないのはハボックの単なるわがままだ。
だけど、残酷すぎる。こんな至福の光景を自分の手で壊せってか。
どうしようどうしよう、と悩むハボックは、忘れていた。
すでにその悩んでいる間に己の休憩時間は終わっていたと言うことと。
我が上司はこの部屋の合い鍵を持っていると言うことをだ。
(終わり)
